84語を収録

歯科衛生士 用語集

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人体(歯・口腔を除く)の構造と機能(6語)

BMI
BMIは、体重(kg)を身長(m)の2乗で割って求める、体格を表す指数(Body Mass Index)。 日本肥満学会の基準では18.5未満を低体重、18.5以上25未満を普通体重、25以上を肥満とする。全身の健康状態や栄養状態の把握に使われ、歯科でも口腔機能と栄養の関係を考えるうえで参照される。
インスリン
インスリンは、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞から分泌され、血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませて血糖値を下げるホルモン。 インスリンの作用不足で起こる糖尿病は、歯周病と互いに影響し合うことが知られており、歯科での問診や保健指導でも把握が重要になる。
嚥下
嚥下は、口の中でまとめた食塊を、口腔から咽頭、食道を通って胃へ送り込む一連の運動。 食べ物を認識する先行期、かんでまとめる準備期、口腔期、咽頭期、食道期の5期で説明されることが多い。咽頭期には喉頭蓋が気道をふさいで誤嚥を防ぐ。嚥下機能が低下すると誤嚥性肺炎の原因になる。
恒常性
恒常性は、外部の環境が変わっても、体温・血糖値・体液の量や浸透圧などの体内環境を一定の範囲に保とうとする働き(ホメオスタシス)。 主に自律神経系と内分泌系(ホルモン)によって調節され、負のフィードバックの仕組みで変化を打ち消す。 体温の調節では、暑いと発汗、寒いと震えが起こる。
骨粗鬆症
骨粗鬆症は、骨の量が減り、骨の微細な構造が劣化して、骨がもろく折れやすくなる病気。閉経後の女性や高齢者に多い。 治療に使われるビスホスホネート製剤などの骨吸収抑制薬では、抜歯などをきっかけに顎の骨が壊死する薬剤関連顎骨壊死が起こることがあり、歯科治療の前に服薬状況を確認する。
糖尿病
糖尿病は、インスリンの作用不足によって、血糖値が高い状態が続く病気。長期の血糖の状態はHbA1cで評価する。 歯周病は糖尿病の合併症のひとつとされ、糖尿病の人は歯周病が悪化しやすく、歯周病の炎症が血糖のコントロールを悪くするという、互いに影響し合う関係がある。歯周治療で血糖の状態が改善するとの報告もある。

歯・口腔の構造と機能(14語)

エナメル質
エナメル質は、歯冠の表面を覆う、人体で最も硬い組織。重量の約96%が無機質(主にハイドロキシアパタイト)でできている。 細胞や血管・神経を含まないため、一度失われると再生しない。酸で脱灰されやすく、フッ化物の作用で耐酸性が高まり、再石灰化が促される。
唾液
唾液は、唾液腺から口腔内に分泌される液体で、成人で1日におよそ1〜1.5L分泌される。 口の中を潤す、食べ物をまとめて飲み込みやすくする(食塊形成)、汚れを洗い流す(自浄作用)、酸を中和する(緩衝作用)、再石灰化を助ける、抗菌などの働きがある。大唾液腺は耳下腺・顎下腺・舌下腺の3つ。
歯髄
歯髄は、歯の内部の歯髄腔を満たす軟らかい組織で、血管や神経、象牙質をつくる象牙芽細胞を含む。 歯に栄養を与え、刺激を痛みとして感じ、刺激に応じて新たな象牙質(第二・第三象牙質)をつくる。う蝕が深く進むと歯髄に炎症(歯髄炎)が起こる。 根管治療は、炎症や感染を起こした歯髄を取り除く処置である。
象牙質
象牙質は、エナメル質やセメント質の内側にあって歯の大部分をつくる硬組織。無機質は重量の約70%で、エナメル質より軟らかい。 内部に象牙細管という細い管が通り、歯髄の象牙芽細胞の突起が入っている。象牙質が露出すると、刺激が伝わって知覚過敏が起こることがある。
歯周組織
歯周組織は、歯を支える組織の総称で、歯肉、歯根膜、セメント質、歯槽骨の4つからなる。 歯肉は歯槽骨を覆う粘膜、歯根膜は歯根と歯槽骨をつなぐ線維性の組織、セメント質は歯根の表面を覆う硬組織、歯槽骨は歯を植え込む顎の骨の部分。歯周病はこれらの組織が炎症で壊されていく病気である。
歯根膜
歯根膜は、歯根のセメント質と歯槽骨の間にある薄い線維性の結合組織。 線維(シャーピー線維)の両端がセメント質と歯槽骨に埋まって歯を支え、かむ力を和らげて骨に伝えるほか、かんだ感覚を感じる受容器や、組織を修復する細胞を含む。歯周炎が進むと破壊される。
セメント質
セメント質は、歯根の象牙質の表面を覆う薄い硬組織で、歯周組織のひとつ。 骨に似た組成で、歯根膜の線維が埋まり込んで歯を歯槽骨につなぎとめる。歯肉が下がって露出すると、エナメル質より酸に弱いため根面う蝕が起こりやすい。 歯根の先端部では厚くなる。
歯槽骨
歯槽骨は、上顎骨と下顎骨のうち、歯根を入れる穴(歯槽)をつくっている部分の骨。 歯根膜を介して歯を支える。歯周炎で吸収されると歯が動揺する。歯を失うと、その部分の歯槽骨はしだいに吸収されて低くなる。エックス線写真で吸収の程度を確認する。 歯の移動にも関係する。
乳歯
乳歯は、最初に生える歯で、上下合わせて20本ある。生後6〜8か月ごろに下顎の乳中切歯から生え始め、2歳半〜3歳ごろに生えそろう。 永久歯よりエナメル質と象牙質が薄く、う蝕が速く進みやすい。6歳ごろから永久歯に生え替わる。乳歯のう蝕経験はdmftで表す。
永久歯
永久歯は、乳歯の後に生える一生使う歯で、第三大臼歯(親知らず)を含めて32本、含めなければ28本。 6歳ごろに第一大臼歯(6歳臼歯)が乳歯の奥に生え、前歯から順に乳歯と生え替わる。生えたばかりの永久歯は歯質が未成熟でう蝕になりやすく、シーラントやフッ化物の応用が勧められる。
歯式
歯式は、口の中のどの歯かを記号と数字で表す方法。 上下左右の4つの区分の線に歯の番号を書くジグモンディ法(永久歯は1〜8、乳歯はA〜E)や、区分と歯の番号を2桁の数字で表すFDI方式(永久歯は11〜48、乳歯は51〜85)がある。診療記録や検診の記録で使う。
咀嚼筋
咀嚼筋は、下顎を動かしてものをかむ筋肉で、咬筋、側頭筋、内側翼突筋、外側翼突筋の4つ。 いずれも三叉神経の第3枝(下顎神経)が支配する。咬筋・側頭筋・内側翼突筋は口を閉じる働き、外側翼突筋は下顎を前に出し口を開ける働きをもつ。 顎関節の動きとともにかむ運動を担う。
三叉神経
三叉神経は、12対の脳神経のうち第5番目の神経で、顔面の皮膚や口腔・歯の感覚と、咀嚼筋の運動を受け持つ。 眼神経・上顎神経・下顎神経の3つの枝に分かれ、上の歯は上顎神経、下の歯は下顎神経の枝が感覚を伝える。歯科の局所麻酔は、この神経の伝わりを一時的に止める処置である。
唾液腺
唾液腺は、唾液を分泌する腺で、大唾液腺(耳下腺・顎下腺・舌下腺)と、口腔粘膜に散らばる小唾液腺がある。 耳下腺はさらさらした漿液性の唾液を出し、導管は上顎第二大臼歯の向かいの頬粘膜に開く。顎下腺と舌下腺は粘液も含む混合性で、舌の下(舌下小丘など)に開口する。

疾病の成り立ち及び回復過程の促進(9語)

バイオフィルム
バイオフィルムは、微生物が集まって自らつくる粘着性の物質に包まれ、膜状の構造をつくって表面に付着した集合体。歯の表面のプラーク(歯垢)はその代表。 内部の細菌は薬剤や免疫の作用を受けにくいため、うがいだけでは取り除けず、歯ブラシやスケーリングなどの機械的な除去が必要になる。
免疫
免疫は、病原体などの異物を自己と区別して排除する体の防御の仕組み。 生まれつき備わる自然免疫(好中球やマクロファージなど)と、特定の異物を記憶して働く獲得免疫(B細胞がつくる抗体による液性免疫、T細胞による細胞性免疫)がある。歯周病の進行にも免疫反応が関わっている。
標準予防策
標準予防策は、すべての患者の血液、体液、分泌物、排泄物、傷のある皮膚、粘膜を感染の可能性があるものとして扱う、感染対策の基本(スタンダードプリコーション)。 手指衛生、手袋・マスク・ゴーグル・ガウンなどの個人防護具の使用、器材の適切な処理、鋭利な器具の安全な取扱いなどを含む。患者ごとに感染症の有無で対応を変えない点が特徴。
炎症
炎症は、細菌の感染や外傷などの有害な刺激を受けた組織に生じる生体の防御反応。 発赤、熱感、腫脹、疼痛の4徴候に機能障害を加えた5徴候で表される。急性炎症では好中球、慢性炎症ではリンパ球やマクロファージなどが主に働く。歯肉炎や歯周炎も炎症である。
誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎は、唾液や食べ物などが誤って気管に入り(誤嚥)、それとともに口腔や咽頭の細菌が肺に入って起こる肺炎。高齢者に多い。 眠っている間に気づかずに起こる不顕性誤嚥も原因になる。口腔清掃や口腔機能の維持といった口腔衛生管理で、発症を減らせることが報告されている。
根面う蝕
根面う蝕は、歯肉が下がって露出した歯根の表面(セメント質・象牙質)にできるう蝕。高齢者で増えている。 歯根面はエナメル質より無機質が少なく、より高いpHで脱灰が始まるため進みやすい。予防には、フッ化物配合歯磨剤の使用やプラークの除去、唾液の分泌の維持が大切になる。
象牙質知覚過敏
象牙質知覚過敏は、露出した象牙質に冷たい物や歯ブラシなどの刺激が加わったとき、一過性の鋭い痛みが起こる状態。 象牙細管の中の液体が動き、歯髄の神経を刺激するという考え方(動水力学説)で説明される。歯肉の退縮や不適切な歯みがきによる摩耗が原因になり、硝酸カリウムを含む歯磨剤や、象牙細管をふさぐ処置で対応する。
ミュータンスレンサ球菌
ミュータンスレンサ球菌は、う蝕の発生に深く関わる口腔内の細菌群(Streptococcus mutansなど)。 ショ糖(砂糖)から、歯面にくっつく不溶性グルカンをつくってプラークを形成し、糖を分解して酸を出す。乳幼児には主に養育者の唾液を介して伝わるとされる。
口腔がん
口腔がんは、口の中にできるがんの総称で、舌がんが最も多く、舌の縁にできやすい。歯肉・頬粘膜・口底などにもできる。 喫煙や飲酒が危険因子とされる。治りにくい口内炎のような潰瘍やしこり、白板症・紅板症などの前がん病変を早く見つけることが重要で、歯科での口腔粘膜の観察が役立つ。

歯・口腔の健康と予防に関わる人間と社会の仕組み(8語)

8020運動
8020運動は、80歳になっても20本以上の自分の歯を保つことを目指す運動。1989年に当時の厚生省と日本歯科医師会が提唱した。 20本以上の歯があれば、多くの食品をかんで食べられるとされることが根拠になっている。歯科疾患実態調査では、8020を達成した人の割合が増加してきている。
DMFT
DMFTは、永久歯のう蝕経験を表す指標で、未処置のう蝕歯(D)、う蝕による喪失歯(M)、処置歯(F)の本数を合計したもの。Tは歯(Tooth)の単位で数えることを表す。 集団では1人平均DMF歯数として比べる。乳歯は小文字のdmftで表す。歯面単位で数えるDMFSと区別する。
受動喫煙
受動喫煙は、他人の喫煙によって生じたたばこの煙にさらされること。 健康増進法では、多数の人が利用する施設での望まない受動喫煙を防ぐための措置が定められている。喫煙は歯周病の重要な危険因子で、受動喫煙も口腔を含む健康に悪影響を与える。 家庭での受動喫煙は、子どもの健康への影響も指摘されている。
特定健康診査
特定健康診査は、高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、医療保険者が40〜74歳の加入者を対象に行う、メタボリックシンドロームに着目した健診(特定健診)。 結果に応じて特定保健指導を行う。問診票には、食事のかみ方に関する質問が含まれている。 歯科との連携も進められている。
歯科口腔保健の推進に関する法律
歯科口腔保健の推進に関する法律は、口腔の健康が全身の健康の保持増進に重要な役割を果たすことを踏まえ、歯科疾患の予防などの歯科口腔保健の施策を総合的に推進するための法律(2011年制定)。 国は基本的事項を定め、定期的な歯科検診の勧奨や、障害者・介護を必要とする人への歯科保健の推進などを規定している。
健康日本21
健康日本21は、健康増進法に基づく国民の健康づくりの基本方針で、現在は2024年度から始まった第三次の計画が進められている。 健康寿命の延伸と健康格差の縮小を目標に、生活習慣の改善などの分野ごとに目標を定めている。歯・口腔の健康の分野では、歯周病を有する者の減少や、よくかんで食べることができる者の増加などを掲げている。
学校歯科健康診断
学校歯科健康診断は、学校保健安全法に基づき、学校で毎年行う歯と口腔の健康診断。 う蝕のほか、歯垢・歯肉の状態、歯列・咬合、顎関節を調べる。むし歯ではないが観察が必要な歯をCO(要観察歯)、歯肉に軽い炎症があり観察が必要な者をGO(歯周疾患要観察者)として、保健指導につなげる。
歯科疾患実態調査
歯科疾患実態調査は、厚生労働省が全国の歯科疾患の状況を把握するため、1957年から定期的に行っている調査。 年齢別の現在歯数、う蝕や歯周病の状況、8020達成者の割合などを明らかにし、歯科保健の施策の基礎資料になる。令和6年(2024年)の調査は、国勢調査の調査区から無作為に抽出した地区(国民健康・栄養調査と同じ調査地区)で実施した。

歯科衛生士概論(5語)

インフォームド・コンセント
インフォームド・コンセントは、患者が病状や処置の内容・目的・危険性・ほかの選択肢について十分な説明を受け、理解したうえで、自分の意思で同意すること(説明と同意)。 医療法でも、医療の担い手は適切な説明を行い、患者の理解を得るよう努めるとされている。歯科衛生士も、処置や指導の前に分かりやすく説明する役割を担う。
守秘義務
守秘義務は、業務上知り得た人の秘密を、正当な理由なく漏らしてはならない義務。 歯科衛生士法第13条の6に定められ、歯科衛生士でなくなった後も同様に課される。違反した場合は罰金の対象になる(告訴が必要な親告罪)。 患者の情報を扱う記録や会話の管理にも注意が必要になる。
業務記録
業務記録は、歯科衛生士が業務を行ったときに作成する記録で、歯科衛生士法施行規則により3年間保存するものとされている。 実施した処置や指導の内容、患者の状態などを記録し、継続的な管理やほかの職種との連携、説明責任に役立てる。 記録は正確に、時系列で、事実に基づいて書く。
歯科衛生士
歯科衛生士は、厚生労働大臣の免許を受けて、歯科医師の指導の下に歯科予防処置を行うほか、歯科診療の補助と歯科保健指導を業とする専門職(歯科衛生士法)。 歯科予防処置は、歯の露出面や正常な歯肉の遊離縁下の付着物・沈着物を機械的に除去すること、歯と口腔に薬物を塗布すること。守秘義務や名称の使用制限などの規定もある。
歯科衛生過程
歯科衛生過程は、歯科衛生士が対象者の問題を見つけて解決するために行う、系統的な思考と行動の枠組み。 情報を集めて分析するアセスメント、問題を明確にする歯科衛生診断、目標と方法を決める計画立案、実施、評価の段階からなり、記録(書面化)を伴う。評価の結果は再びアセスメントに戻して見直す。

臨床歯科医学(9語)

う蝕
う蝕は、口腔内の細菌が糖を分解してつくる酸によって、歯の硬組織(エナメル質・象牙質など)が溶け出す(脱灰する)疾患。いわゆるむし歯。 宿主(歯の質)、細菌、食物(糖質)に時間の要因が重なって発生する。ミュータンスレンサ球菌などが関わり、エナメル質は口腔内のpHがおよそ5.5を下回ると脱灰が進む。初期の段階では再石灰化で回復しうる。
プロービング
プロービングは、目盛り付きの歯周プローブを歯と歯肉の間に入れ、歯周ポケットの深さやプロービング時の出血などを調べる検査。 歯周病の診断や治療の効果の判定に使う。プローブは歯の長軸に沿わせ、軽い力(25g程度)で挿入する。ポケットの深さと歯肉の位置から、付着の喪失(アタッチメントロス)を求める。
歯周炎
歯周炎は、歯肉の炎症が歯根膜や歯槽骨などの深い歯周組織に広がり、歯を支える組織が破壊される病気。 プラーク中の細菌が主な原因で、歯周ポケットの形成、付着の喪失、歯槽骨の吸収が起こり、進むと歯が動揺して失われる。喫煙や糖尿病が危険因子となる。歯肉だけに炎症がとどまる歯肉炎と区別する。
歯肉炎
歯肉炎は、炎症が歯肉にとどまり、歯槽骨の吸収などの付着の喪失を伴わない状態。 主にプラークが原因で、歯肉の発赤・腫れ・出血がみられる。適切なプラークの除去で回復しうる(可逆的)点が歯周炎との大きな違い。思春期や妊娠中にはホルモンの影響で起こりやすくなる。
歯周ポケット
歯周ポケットは、歯と歯肉の間の溝(歯肉溝)が、炎症によって病的に深くなったもの。 歯肉の腫れだけで深くなった仮性ポケット(歯肉ポケット)と、付着の喪失を伴って歯根側に深くなった真性ポケットがある。プロービングで深さを測り、ポケット内のプラークや縁下歯石を取り除く治療を行う。
歯石
歯石は、プラークに唾液や歯肉溝の滲出液に含まれるカルシウムなどが沈着して、石のように硬くなったもの。 歯肉より上の縁上歯石は白色〜黄白色で、唾液腺の開口部に近い下顎前歯の舌側や上顎大臼歯の頬側につきやすい。歯周ポケット内の縁下歯石は暗褐色で硬い。表面にプラークがつきやすいため、スケーリングで除去する。
ルートプレーニング
ルートプレーニングは、歯周ポケット内の歯根面について、汚染されたセメント質などを取り除き、表面を滑らかにする処置。 スケーリングとあわせてスケーリング・ルートプレーニング(SRP)として行われ、歯周基本治療の中心になる。主にキュレット型スケーラーを使う。
口腔機能低下症
口腔機能低下症は、加齢などで、かむ・飲み込む・話すなどの口の機能が複合的に低下した状態。 口腔衛生状態不良、口腔乾燥、咬合力低下、舌口唇運動機能低下、低舌圧、咀嚼機能低下、嚥下機能低下の7項目を検査し、3項目以上が該当すると診断される。放置すると低栄養や誤嚥につながるため、口腔機能の管理を行う。
オーラルフレイル
オーラルフレイルは、滑舌の低下、食べこぼし、わずかなむせ、かめない食品の増加など、口の機能のささいな衰えが重なった状態。 全身の虚弱(フレイル)や要介護につながる入り口とされ、早く気づいて口腔機能の維持・回復に取り組むことが大切とされる。歯科で診断する口腔機能低下症より前の段階にあたる。

歯科予防処置論(9語)

シーラント
シーラントは、臼歯のかみ合わせの面などにある細い溝(小窩裂溝)を、レジンやグラスアイオノマーセメントなどの材料でふさぎ、う蝕を予防する処置。 歯ブラシの毛先が届きにくい溝に汚れがたまるのを防ぐ。萌出して間もない第一大臼歯などが主な対象で、材料の脱落がないか定期的に確認する。
スケーリング
スケーリングは、歯面に付着した歯石やプラーク(歯垢)、着色などの沈着物を、スケーラーなどの器具で取り除く処置。 歯肉より上の歯石(縁上歯石)と、歯周ポケット内の歯石(縁下歯石)の除去があり、根面を滑らかにするルートプレーニングとあわせて歯周治療の基本となる。歯科衛生士法の歯科予防処置にあたる。
フッ化物歯面塗布
フッ化物歯面塗布は、歯科医師や歯科衛生士が、高濃度のフッ化物製剤を歯の表面に塗るう蝕予防法。歯科衛生士法の歯科予防処置にあたる。 2%フッ化ナトリウム溶液(フッ化物イオン濃度9,000ppm)やリン酸酸性フッ化ナトリウム溶液・ゲル(製剤や方法により約9,000〜12,300ppm)などが使われ、年に数回、定期的に行う。歯の耐酸性を高め、再石灰化を促す。
フッ化物洗口
フッ化物洗口は、低濃度のフッ化物水溶液で一定時間ぶくぶくうがいをするう蝕予防法。 毎日行う方法(フッ化物イオン濃度225ppm程度からの低い濃度)と、週1回行う方法(900ppm、0.2%フッ化ナトリウム溶液)があり、保育所・幼稚園や学校で集団で実施されることもある。第一大臼歯が生える就学前の時期に合わせて始めるとよいとされる。
キュレット
キュレットは、先端が丸い刃部をもつスケーラーで、歯周ポケット内の縁下歯石の除去やルートプレーニングに使う。 特定の部位に合わせて作られた片刃のグレーシー型(刃部の内面が第1シャンクに対して約70°傾く)と、1本で多くの部位に使える両刃のユニバーサル型(約90°)がある。
シックルスケーラー
シックルスケーラーは、刃部が鎌(シックル)の形で先端がとがったスケーラー。断面が三角形で両側に刃がある。 主に歯肉縁上の歯石の除去に使う。先端がとがっているため、歯周ポケットの奥に入れると組織を傷つけやすく、縁下の処置にはキュレットを使う。 刃部は鋭く保つよう研磨する。
超音波スケーラー
超音波スケーラーは、チップを超音波で振動させて歯石を砕いて除去する機器。注水しながら使い、発熱を防ぐとともに洗浄の効果も得る。 効率よく歯石を除去できる一方、心臓ペースメーカーを使用している人には機種によって注意が必要とされ、感染症の患者ではエアロゾルの飛散に配慮する。
PMTC
PMTCは、Professional Mechanical Tooth Cleaningの略で、歯科医師や歯科衛生士が専用の器具と研磨ペーストを使い、すべての歯面のプラークを機械的に取り除いて清掃する処置。 セルフケアでは落としにくい部位のバイオフィルムを除去し、う蝕と歯周病の予防に役立てる。
フッ化物配合歯磨剤
フッ化物配合歯磨剤は、フッ化ナトリウムなどのフッ化物を含む歯みがき剤で、日常のセルフケアでう蝕を予防する最も身近なフッ化物の応用。 日本では2017年からフッ化物イオン濃度1,500ppmまでの製品が認められている。年齢に合った濃度と使用量を守り、みがいた後のうがいは少量の水で軽くするとよいとされる。

歯科保健指導論(10語)

セルフケア
セルフケアは、本人が日常生活の中で主体的に行う健康管理で、歯みがきや歯間清掃などの口腔清掃が中心になる。 歯科医師や歯科衛生士などの専門職が行うプロフェッショナルケアと組み合わせることで、う蝕や歯周病の予防効果が高まる。 歯科衛生士は、本人の生活に合った方法を一緒に考えて定着を支援する。
デンタルフロス
デンタルフロスは、細い糸状の清掃用具で、歯と歯の間(隣接面)に通してプラークを除去する。 歯間のすき間が狭い部位に適している。歯ブラシだけでは隣接面のプラークは取りきれないため、歯間清掃用具を併用する。歯肉を傷つけないよう、ゆっくり歯面に沿わせて動かす。
動機づけ面接
動機づけ面接は、相手の価値観や「変わりたいけれど変われない」という迷い(両価性)を尊重しながら、本人の中にある変化への動機を引き出す対話の方法。 開かれた質問、是認、聞き返し、要約などの技法を使う。指導者が一方的に説得するのではなく、本人が自ら行動を変えることを支える。禁煙や口腔清掃習慣の指導に用いられる。
歯間ブラシ
歯間ブラシは、歯と歯の間のすき間に差し込んで、隣接面のプラークを取り除く小型のブラシ。 すき間の大きさに合ったサイズを選び、無理に押し込まない。すき間が比較的広い部位(歯周病で歯肉が下がった部位、ブリッジの下など)に適し、狭い部位にはデンタルフロスを使う。
プラークコントロール
プラークコントロールは、う蝕や歯周病の原因になるプラーク(歯垢)の量を減らし、たまりにくい状態を保つこと。 歯ブラシや歯間清掃用具による機械的な方法と、洗口剤などによる化学的な方法がある。本人のセルフケアと、専門職によるプロフェッショナルケアを組み合わせて行う。
PCR
PCRは、O'Leary(オリアリー)らのプラークコントロールレコードで、プラークの付着状況を評価する指標。 歯垢染色剤で染め出し、1歯を近心・遠心・頬側・舌側の4面に分けて、歯肉に接する部分にプラークがある面の数を数え、全歯面数に対する割合(%)で表す。数値が低いほど清掃状態がよい。
歯垢染色剤
歯垢染色剤は、歯に付いたプラーク(歯垢)を赤などの色で染め出し、目で見えるようにする薬剤。 磨き残しの部位を本人に示して歯みがきの指導に使うほか、PCRなどの評価に使う。 染め出した結果を鏡で本人に見せると、磨き残しの部位を具体的に伝えられる。口唇や衣服に色がつかないよう、ワセリンなどで保護してから使う。
バス法
バス法は、歯ブラシの毛先を歯と歯肉の境目(歯肉溝)に向けて、歯の長軸に対して約45°に当て、小刻みに振動させてみがく方法。 歯肉溝付近のプラークの除去とマッサージの効果が期待でき、歯周病の予防に適している。歯面に直角に毛先を当てて小刻みに動かすスクラッビング法と区別する。
スクラッビング法
スクラッビング法は、歯ブラシの毛先を歯面に直角に当て、小刻みに前後に動かしてみがく方法。 比較的習得しやすく、歯面のプラークの除去に適している。歯肉溝に毛先を向けて約45°に当てるバス法、円を描くように動かすフォーンズ法(描円法)などと区別して問われる。
口腔衛生管理
口腔衛生管理は、歯科医師の指示を受けた歯科衛生士などが、口腔内の清掃や義歯の清掃、口腔の状態の評価などを専門的に行って、口腔を清潔で健康に保つこと。 要介護の高齢者や入院患者では、誤嚥性肺炎の予防にもつながる。食べる・話すなどの機能の維持・回復を図る口腔機能管理とあわせて行われる。

歯科診療補助論(14語)

オートクレーブ
オートクレーブは、高温・高圧の飽和水蒸気で器材を滅菌する装置(高圧蒸気滅菌器)。 121℃で15〜20分程度、または132〜134℃で短時間処理するなどの条件で、芽胞を含むすべての微生物を死滅させる。耐熱性のある金属製の器材に適し、熱に弱いプラスチック製品などには使えない。
消毒
消毒は、病原性のある微生物を、感染を起こさない程度まで減らす処理。すべての微生物を除く滅菌とは区別される。 消毒薬は、作用する微生物の範囲によって高水準(グルタラールなど)、中水準(次亜塩素酸ナトリウム、消毒用エタノールなど)、低水準に分けられ、器材の用途や材質に合わせて選ぶ。
滅菌
滅菌は、対象物に存在するすべての微生物(芽胞を含む)を殺滅または除去する処理。 高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)、エチレンオキサイドガス滅菌、過酸化水素ガスプラズマ滅菌などがある。皮膚や粘膜を貫通する器具(クリティカル器具)は滅菌が必要とされる。
針刺し事故
針刺し事故は、使用済みの注射針や鋭利な器具が皮膚を刺し、患者の血液などにさらされる事故。B型肝炎・C型肝炎・HIVなどの感染の危険がある。 予防には、使用後の針にリキャップをしない、使った器具はすぐに耐貫通性の専用容器に捨てることが基本。起きた場合は、すぐに流水で洗い、施設の手順に従って報告する。
局所麻酔
局所麻酔は、意識を保ったまま、処置する部位の感覚の伝わりを一時的に止める麻酔。歯科では、粘膜に塗る表面麻酔、注射による浸潤麻酔や伝達麻酔を使う。 リドカインなどの局所麻酔薬に、血管を収縮させるアドレナリンを加えたものが多く、作用時間を延ばし出血を抑える。体調の変化に備えてバイタルサインを観察する。
歯科用エックス線写真
歯科用エックス線写真は、歯や歯槽骨の状態を調べるための画像。フィルムやセンサを口の中に入れる口内法(二等分法・平行法など)と、顎全体を1枚に写すパノラマエックス線撮影などがある。 う蝕や歯槽骨の吸収、根の病変の診断に使う。放射線防護では、時間を短く、距離をとり、遮へいすることが基本。
印象材
印象材は、歯や口腔の形を型取り(印象採得)するための材料。 アルジネート印象材は扱いやすいが、時間がたつと水分の出入りで変形するため、採得後は速やかに石膏を注ぐ。寸法の精度が高い付加型シリコーンゴム印象材などもある。歯科衛生士は練和などの診療補助を担う。
グラスアイオノマーセメント
グラスアイオノマーセメントは、ガラス粉末とポリアクリル酸などの液を練り合わせて使う歯科用セメント。 歯質に化学的に接着し、フッ化物を徐々に放出する性質があるため、う蝕の予防効果が期待される。修復物の合着、充塡、シーラント材などに使われる。 水分に弱い時期がある。
コンポジットレジン
コンポジットレジンは、樹脂に無機質のフィラーを混ぜた、歯の色に近い充塡用の材料。 多くは青色の光を当てて固める光重合型で、歯面の処理と接着材(ボンディング材)を使って歯に接着させる。前歯・臼歯のう蝕の治療で、削る量を少なくした修復に使われる。
バイタルサイン
バイタルサインは、生命の状態を示す基本的な指標で、体温、脈拍、呼吸、血圧の4つが基本(意識の状態を加えることもある)。 歯科治療中は痛みや緊張、局所麻酔などで全身の状態が変わることがあるため、治療の前後や異常時に観察し、急変に備える。 平常時の値を把握しておく。
一次救命処置
一次救命処置(BLS)は、心停止などの急変に対して、その場に居合わせた人が行う救命処置。反応と呼吸を確認し、助けを呼んで119番通報とAEDを依頼し、胸骨圧迫と人工呼吸を行い、AEDで電気ショックを行う。 胸骨圧迫は1分間に100〜120回のテンポで、深さ約5cm(6cmを超えない)で行い、中断を最小限にする。
スポルディングの分類
スポルディングの分類は、器具を使用する部位の感染の危険度によって、必要な処理の水準を決める考え方。 皮膚や粘膜を貫通する器具や無菌の組織に触れる器具(クリティカル)は滅菌、粘膜や傷のある皮膚に触れる器具(セミクリティカル)は高水準消毒以上、健康な皮膚にだけ触れる物品(ノンクリティカル)は低水準消毒や清拭とする。
個人防護具
個人防護具(PPE)は、医療従事者が血液や体液、飛沫などから身を守るために着ける手袋、マスク、ゴーグル・フェイスシールド、ガウンなど。 標準予防策の重要な要素で、処置の内容と飛散の予測に応じて選ぶ。外すときは汚染面に触れないよう順序に注意し、外した後は手指衛生を行う。
ラバーダム防湿
ラバーダム防湿は、ゴムのシートに穴をあけて処置する歯だけを出し、クランプで固定して、唾液や呼気の湿気から処置する歯を隔離する方法。 接着操作や根管治療で、汚染を防ぎ、器具の誤飲・誤嚥や薬液の流出を防ぐ目的で使われる。 視野が確保しやすくなる利点もある。